SUNROSER AKASAKA

散歩の流儀

車窓越しの風景

窓越しの景色は近くて遠い、

しかも決して手が届かない場所に位置している。

ここに写されたのは紀伊国坂を赤坂見附に下りてゆく濠沿いの道、

高速道路と一般道が重なり、道の行く手には長く、深い影が伸びている。

一瞬にして通り過ぎてゆくビル影と鋭角的な空、

そして都会の影と光を映し出したお濠の水面、

この写真が語りかけることが、"今日のコト"でないことは確かだ。

遠い過去ではなく、ふっと甦ってくる数年前のあの日のこと、去年のちょうど今頃のこと。



鈴木理策の写真の中に流れる時間は今ではない。

綿々と流れる時間の帯だ。窓越しの視界は、私たちに旅人の視点を与える。

自分の足で歩くこと、乗り物に乗ること、移動することは自分の記憶を辿ることに重なり合う。



"車窓越しの風景"、かつて写真にこの独特の感覚を持ち込んだ写真家がいた。

彼は車でアメリカを旅することで、その国の本質を描き出した。

旅人の視線だからこそ見えてくる真実、

写真家がその視線の先に見つめているものは現在であり、過去であり、未来でもある。



太田菜穂子 写真キュレーター

 

鈴木理策(すずき りさく)
写真家 / 東京芸術大学美術学部先端芸術表現科准教授
1963年和歌山県新宮市生まれ。コンテンポラリーアーティスト、建築家との親交が深い写真家。
撮影時のふるまい、被写体との距離感、作家としての作品への介入度、どれをとってもオリジナルなマナーを持つ。
2000 年第二五回木村伊兵衛写真賞。2006年第22回東川賞国内作家賞、和歌山県文化奨励賞。
2008年日本写真協会賞年度賞。著書に、写真集『熊野、雪、桜』『YUKI・SAKURA』他


太田菜穂子(おおた なほこ)
キュレーター/ GALLERY 21 ギャラリスト/World Photographic Academy メンバー
フランスとのネットワークを基盤とし、GALLERY 21 (1998年スタート) で現在までに70近くの写真展を企画。
これと並行し、企業や国内外のブランドとのコラボレーションによる文化、アート、環境関連プロジェクトを
トータルにプロデュース。

www.gallery21-tokyo.com

PAGE UP