

家元継承十年目の今年、どのような想いで過ごされていらっしゃいますか?
この十年間、私を支えてくださった多くの方々、そのおひとりおひとりにお礼をお伝えしたいと考える毎日です。尊敬する父の跡を継ぎ、草月の家元となることは私にとってとてつもない大きなプレッシャーでした。ただ十年という時間の量と質が私なりの新たな表現、"勅使河原茜のいけばな"へと導いてくれたようにも感じています。
家元が目指される「いけばな」とは?
いけばなも時代と共にそのスタイルが変化してゆくものだと思います。でも同時に、決して変えてはならないこともあります。それは「心をいける」という精神ではないでしょうか。自分が伝えたいメッセージである"心"を感じ、それがご覧になる方へ確かに届くよう"いける"という姿勢です。同じ器や同じ植物を使っても、いける場所や時間、ご覧になられる方が異なれば、そこには新しい表現が生まれるはず、まさにいけばなは"一期一会"です。かけがえのない時空間で、ご覧になる方と最高のコミュニケーションを成立させたいと考えております。言い換えれば、それこそが私は今、ここで、確かに生きているという証しに繋がるのではないかと思うのです。この十年はまさに、自分自身に正面から向き合い、その想いをストレートにさらけ出すことで初めて伝わることの意味と強さを学ぶ時間だったように感じております。

今年の花との出会いで印象的だったことは?
今年は東日本大震災や原発事故など心痛む大変な出来事があり、つらく苦しい状況が今も続いています。そうした心境の中で、私は日々ふれあう植物からいつにもまして大きな力をもらっているように思います。
今年の夏、プライベートでアメリカ各地を旅行しました。広大なアメリカは少し車で走れば自然の中に入り込んでしまいますが、この大自然の中で見た花たちの真の強さとおおらかなフォルムに深い感銘を受けました。私たちは花材を国内のみならず世界中から取り寄せておりますが、その植物が自然界で実際どのような状態なのかを知る機会はめったにありません。海外では、いけばなのための"いい枝ぶり"の樹木を入手するのがいつも大変です。花についてはそれぞれの都市のフラワーマーケットに行けば何とかなりますが、枝ものについては森に行って自分で切るか、植物園や知人の庭から調達するなどのご協力を仰ぐしかありません。今回、アメリカの西海岸の郊外で、日本でも使ったことのある植物たちの本当の姿に出会えたことは私にとって大きな発見でした。自然界での伸び伸びとした姿、そのスケール感はまさに目から鱗でした。
家元にとって大人とは?
自分ひとりで生きているのではないということを認識することではないでしょうか? 自分という存在がさまざまな人々に支えられているという事実を受け入れ、感謝して生きること。私の場合で言えば、祖父から叔母、そして父たちの仕事が現在の私の後ろ盾となり、草月会の会員の皆様と共に"いけばな"という表現を世界に向かって発信し、その意味を未来に向かって切り拓いているのだということです。私が提唱するいけばなのライヴは、観客とのリアルなコミュニケーションから生まれる絆をその場で表現することです。大人としての覚悟を持ち、自分自身を映し出す鏡である現在と向き合い、そこで生まれる心のふれあいを表現する"対話としてのいけばな"を心がけたいものです。(談)
2011年9月29日
草月会館にて