SUNROSER AKASAKA

紀尾井町マイスターズ

永野敦子氏

着る人の体型に寄り添いつつ、ラインとしての美しさを持つニット・ドレス。幅広い年齢層からニットが支持される理由はなんと言っても、その“着心地のよさ”だろう。ひと針ずつ編み上げることで成形していくニットならではの伸縮性、通気性、そして緩やかなドレープラインは、人それぞれに異なる体の形や動きをフォローし、優しくフィットする。極細から極太までの糸を様々な手法で織り、豊かなカラーヴァリエーションとデリケートな色合いが奏でる質感の魅力は実際に見て、触れることで初めて実感する。さて、ファッションのメインストリームにおいて、ニットという素材にスポットライトを当てたのはココ・シャネル。締め付けのきつかった服装から心身ともに女性を解放しようとしたココの姿勢は、その後のファッション界に深く浸透し、ニットは確かなステイタスを築くまでに至った。ところで、ニットの魅力を引き出す能力については、どうも女性デザイナーが勝っているような感がある。ココ・シャネルに始まり、ソニア・リキエル、アンジェラ・ミッソーニ。彼女たちの仕事に共通するのは素材の特性を最大限に引き出すためのモノづくりと、ニットを愛する心だろう。デザイン、製図、編み立て、縫製、仕上げ。ひとつの流れとして成立するこの緊密な仕事の質を決定するのは、ブレのない職人気質と変わらぬ愛情かもしれない。
永野敦子、青山サロン代表取締役社長、そしてニット・デザイナー。時代に媚びる事なく、自らのモノづくりを誠実に歩んできた女性の一日はボディトレーニングから始まるという。ニット・デザイナーとして、必要なことをひとつずつ学び、覚え、実践し、今に至ったという青山サロンのニットは、本物を評価する感度の鋭い顧客たちから高い支持を受けている。

ゴールに向かって着々と歩んできたというより、何かに導かれるようにニット・デザイナーとしてのキャリアを重ねてきたと言ったらいいのでしょうか…。1960年代、クリスチャン・ディオールやピエール・カルダンなど、ヨーロッパからの最新ファッションが日本にも紹介されるようになり、松本弘子さんが東洋人として初めてパリコレクションのステージに登場し、日本の女性たちもファッションという観念や本物の美しさに開眼していったように思います。当時の私は、ただ自分に似合う服を着ていたくて、お手製のニットを着て、子供の幼稚園の送り迎えをしていました。そのニットに問い合わせが相次ぐようになったのが全ての始まりでした。まだ日本にはニットを製造するプロもマーケットも育っていない状況の中、ひとつひとつを自分で学び、覚え、考え、吟味し、青山サロンとしての品質管理基準を築き上げてきました。私がニットに惹かれる理由はなんといっても素材の持つ凹凸感、ラインにニュアンスを与える独特の質感です。編み立ては非常にデリケートな作業で、表と裏での調整はもちろん、仕上がり寸法に合わせ、思い切ったバランスでラインを作り上げてゆきます。今でもコレクションが完成すると、すべてを自分で着用し、その仕上げや着心地を確認しています。紀尾井町は目の肥えたお客様ばかり。これからも心を込めて一着ずつお届けしてゆきたいと考えております。


丁寧な仕事が生み出すパワーの証として
大切にされているアジアの少数民族のおぶい紐の一部。
ジャケットの胸元に飾り、レースのようにコーディネートして愛用されることも。


リング

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